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瀬戸本業窯のおはなし



江戸時代から300年続く瀬戸本業窯

瀬戸本業窯

 

瀬戸本業窯は、愛知県瀬戸市にある瀬戸焼の窯元です。古瀬戸という瀬戸のなかでも一番古い場所にあります。日常の生活道具である器や瓶(かめ)、手水鉢(ちょうずばち)などを作ることを生業(なりわい)にして、現在まで約300年もその技を受け継ぎ、守りぬいています。

家庭はもちろん、料理人からも絶大な支持を受ける瀬戸本業窯の器について、おはなししていきます。





 

 



「用の美」を追求した民藝の器

瀬戸本業窯 神楽坂プリュス

瀬戸本業窯の器

瀬戸本業窯が作るのは、日常で使いやすい素朴な温かみのある器です。美術品ではなく、「民藝」という分類に入ります。

「民藝」とは、簡単にいうと日常で使うために作られた生活道具のこと。「民衆的工芸」を略して、1925年に思想家の柳宗悦、陶芸家の浜田庄司、河井寛次郎らによって作られた造語です。

作家が作る芸術品と大きく違う点は、名も無き職人たちの手で生み出されているということ。完成までの一連の工程を全て一人で行う作家に対して、民藝は生地作り・成形・絵付け・窯焚きなどの各工程をそれぞれ専門の職人が行う分業制で作られています。









 



瀬戸本業窯 神楽坂プリュス

成形

瀬戸本業窯でも、作業は昔も今も変わらず分業制で行い、全ての工程を自分たちの手でできるようにしています。

日々同じ作業を繰り返し、腕を磨き続けている職人たちによって作られるからこそ、手作りながら同じ形、同じデザインの器をずっと作ることができるのです。

形は同じであれ、昔は行灯(あんどん)の油の受け皿として用いられていた行灯皿が、今では小皿として使われるようになったりと、瀬戸本業窯300年の歴史のなかで、時代に合わせて少しずつ様変わりもしているのもおもしろいです。






 


 




隠すことのない本物の器作り

釉薬

器の表面を覆っているガラス質の部分を釉薬(ゆうやく)といいます。

この釉薬をかけて焼くことにより土がコーティングされ、水漏れしない汚れの付きにくい器になるとともに、黄瀬戸(きせと:黄色)・呉須(ごす:青)・織部(おりべ:緑)といった、瀬戸焼特有のさまざまな色が出てきます。

この色を作り出す方法にも、瀬戸本業窯の器作りの本質が隠されているのです。










水野雄介さん
▲瀬戸本業窯、8代後継の水野雄介さん
 

瀬戸本業窯では、7代目の水野半次郎さんと8代後継の水野雄介さんらが、自ら作った釉薬を使用しています。

今では釉薬用の薬品を用いる窯元も多くなっていますが、瀬戸本業窯では全て自然界にある材料を用いる昔ながらの方法にこだわり、釉薬作りも全て自分たちで行っています。









▲白く入った線の部分がうのふ釉
 

特徴的なのが、うのふ釉という白い色。無農薬のお米の藁を焼いて灰にしたものを混ぜて釉薬にすることで、温かみのある自然な白い色が生まれます。

そう、白釉の白色は、お米の白色なんです!

ちなみに、普通の藁ではなく無農薬の藁を使うのが瀬戸本業窯のこだわりなのだそうです。

さらに、瀬戸本業窯では、器作りの作業風景や作り方もオープンにしています。器作りの全てに対して一切手を抜いていないからこそ隠すこともなく、高い技術は説明したところで絶対に真似ができないから。

嘘のない「本物」がここにあります。








 




 



 

料理が美味しく見えるデザイン

馬の目

目を引くこちらのデザインは、「馬の目」という江戸時代から300年以上続く、伝統的な紋様。


 


菊紋

こちらは「菊紋」。
このように、自然モチーフの意匠デザインが多いのも瀬戸焼の特徴です。

 


 


三彩

こちらは「三彩(さんさい)」という3色の色を使ったデザイン。



 

黄瀬戸

瀬戸本業窯に惚れ込んだ方が最終的にたどり着くのが、こちらのシンプルな「黄瀬戸」。


さまざまなデザインのある瀬戸本業窯の器ですが、料理を盛りつけたときにその良さに気づくはず……
どんな料理をのせても、料理が本当に美味しく見えるんです!
器の重さも、重すぎず、軽すぎず、ちょうど使いやすい重さ。
「用の美」という言葉が本当に似合います。

ぜひ使ってみて、その良さを実感してください。

(2017.04.29)

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